「いまのは一体何?」
スマートフォンの背面のライトが命を吹き込まれたかのように明滅したのを見て、友人はそう言った。これこそが、「Nothing Phone(2)」を手に入れたいと思う理由のひとつだろう。この端末は、現在店頭に並んでいるどのスマートフォンとも違う、ぴかぴかと光る派手なAndroid端末なのだ。
OnePlusを共同創業したカール・ペイ(裴宇)が立ち上げたNothing Technologyは、2台目となるスマートフォンをこのほど発表した。米国での価格は599ドル(日本では79,800円から)となっており、最高峰の機能を提供しながらも他社のフラグシップモデルの製品の価格を大きく下回っている。この価値提案はOnePlusの強みとして知られていたものだが、中価格帯のスマートフォン製品の競争は以前より激しさを増している。
「Google Pixel 7A」と「Samsung Galaxy A54」はどちらも「Nothing Phone(2)」より低価格だ。「OnePlus 10T」や近日発売予定の「Asus Zenfone 10」もこれよりすごく高いわけではない。しかし「Nothing Phone(2)」は欠点がありながらも、特徴的なハードウェアと洗練されたソフトウェアによる高いデザイン性で、どの競合製品をも上回っている。機能面でも「Nothing Phone(1)」から大幅に改良されている。
特徴的なGlyphライト
「Nothing Phone(2)」のデザインは前モデルとそう変わらない。端末の色は白ときれいな灰色から選べ、背面の中身が透けて見えるデザインはそのままだ。このデザインこそが「Nothing Phone(2)」をユニークな端末にしている。個人的に、際立った特徴があるスマートフォンが大好きだ。地味な端末はもういい!
LEDライトはカ所かに分かれて配置されている。これは点灯できる場所が多くなったことが関係しているのだろう。この白いLEDライトは、通知を受け取ると特定のパターンで点滅する。
またスマートフォンを自動でサイレントモードにし、通知をライトで知らせる「Flip to Glyph」モードを搭載した。これは前モデルにも搭載されていたが、大きく改善された部分がある。「Essential Glyph Notifications」機能が新たに搭載されたのだ。
この新機能を使うと、通知してほしい内容を細かく設定できる。そして端末を下向きに置いているときに通知が来るとLEDの1つが点灯する。このLEDは、スマートフォンを手に取って通知を読んだり、消去したりするまで消えない。例えば、友人とランチをしている間もTelegramに届いた妻からの大事なメッセージを見逃したくない場合、特定の会話の通知を背面のLEDで知らせるように設定できる。ほかのTelegramの通知ではLEDが点灯し続けることはない。妻からのメッセージの通知だけLEDが点灯し続けるのだ。
この機能の唯一の問題は「Glyph」のメインの設定ページからは、通知をどの程度細かく設定できるかが明白ではないことだ。もちろんInstagramのダイレクトメッセージ(DM)(DMのメッセージリクエストではない)を通知するよう設定できるが、TelegramやFacebook Messengerといったアプリでは特定の会話の通知まで設定できる。こうした選択肢がすべてGlyphの設定に表示されるわけではない。設定したい通知があるときは、その通知が届いたときに表示されている下向きの矢印を長押しして、「Essential Glyph」の通知に設定する必要がある。
Glyphライトは、Glyphのタイマー機能とも連動する。このタイマーは任意の時間を設定して端末を下向きに置くことで作動する。LEDの帯の1つが点灯し、残り時間に対応して徐々に光が消えていくのだ。残り時間を画面で確認する必要がないのである。
またNothingはLEDライトをサードパーティのアプリとも連携できるようにした。ただし、新端末の発売時にアプリ開発で連携したのはウーバーのみである。この連携で、「Uber」のアプリで配車を依頼したとき、ドライバーが到着するまでの時間を確認するためにアプリを何度も確認する必要がなくなった。ドライバーがどれほど近くに来たかはLEDの帯の様子を見るだけでわかるのだ。先週、配車を数回予約したところ、この機能は問題なく動作した。ただし、ドライバーの名前とナンバープレートを確認するために必然的にアプリを見ることになる。
画面を無駄に見るのを防ぐ
それでも、このちょっとした機能はいまこの瞬間に集中し、スマートフォンを無駄に見るのを防ぐ賢い方法を提供している。欠点はというと、スマートフォンを表向きに置くという長年の習慣に逆らうことが難しいことだ。Glyphライトの機能の存在をよく忘れてしまうのである。裏向きに置くのに慣れるにはしばらく時間がかかるかもしれない。
それにこの端末をあらゆる場所で裏向きに置いてほしいのなら、Nothingは少なくともGorilla Glass 5の画面が物に接触しないようにするためのクリアケースを同梱してくてもいいと思う。まだ傷は付いていないが、これは時間の問題だ。
ユーザーがスマートフォンを必要以上に使わないようにすることは、Nothingの設計理念の大事な要素である。同社はソフトウェアとハードウェアをより「意図的」にすることで、本当に必要なときにだけユーザーが端末を使うようにしようとしている。
新しいモノクロのインターフェースはこの施策の一環である。これはグーグルがAndroidに搭載した「おやすみ時間モード」を真似たもので、スマートフォンのソフトウェアの色をモノクロにすることで、寝る前に画面をスクロールし続けてしまうことを防ぐ機能である。アプリ名の表記もない。
とはいえ、ここ数週間にわたってモノクロのインターフェースを常時使用しているが、これが意図した目的を果たしているようには感じられなかった。お気に入りだった「Reddit」のサードパーティ製のクライアントアプリが閉鎖されてしまったので、すでにスマートフォンを使う時間が減っていたこともある(「Reddit」の公式アプリをダウンロードするつもりはない。どうぞお構いなく)。それでもスマートフォンの画面が常にモノクロだと、「おやすみ時間モード」を見たときに起きる条件反射的な「もう寝なきゃ」という気持ちが起きないのだ。モノクロの画面は非常に洗練されたデザインのように感じるだけだ。
見た目についてはNothingを称賛しなければならない。Nothing OS 2.0は美しい。特にNothing独自のウィジェットは素晴らしいのだ。さらによい点は、これらのウィジェットをロック画面に配置できることである。これまで使ったどのAndroid端末よりもはるかに優れている。通知音や着信音も個性的だ。
また、Nothingは「Glyph コンポーザー」機能を提供している。これは着信音や通知音をカスタマイズできる機能だが、夢中になって多くの時間を使ってしまった。「スマートフォンを好きなように変更できる」精神を醸成した、Androidの古きよき時代を思い起こさせるのだ。
動作は非常に滑らか
「Nothing Phone(2)」の基本的な性能は全体的にかなり優れている。6.7インチの有機EL(AMOLED)ディスプレイのリフレッシュレートは120Hzで、表示は鮮やかかつ滑らかである。晴れた日でも十分に明るい。4,700mAhのバッテリーは1日使っても十分にもった。 スマートフォンを4時間使った後でも40%以上は残っていた。1日半程度は余裕でもつだろう。
「Nothing Phone(2)」は、昨年のフラッグシッププロセッサーであるクアルコムの「Snapdragon 8+ Gen 1」、8GBのRAM(ストレージ容量は128GB)を搭載している。端末の反応は非常にいい。アニメーションとアプリの起動は早く、いままで使ったどの端末よりもさくさくと動いた。動きも非常に滑らかだ。
ワイヤレス充電に対応し、NFCも搭載しているので非接触決済が使える。また、NothingはAndroid OSのアップデートを3回、セキュリティの更新を4年間保証している。これはグーグルやサムスンほど充実した内容ではないが、大幅に劣るわけでもない。
とはいえ、残念ながら欠点もある。防水・防塵性能がIP54しかないのだ。「Google Pixel 7」のような同じ価格帯の端末はより高いIP68の評価を得ている。つまり、雨天での使用は問題ないが、端末を水に浸けないようにしたほうがいいということだ。また米国では、AT&TとT-Mobileのネットワークでしか使えず、Verizonのネットワークには対応していないことも追記したい。
カメラの性能はどうかって?今回の端末は前モデルよりも大幅に進化している。しかし、50メガピクセルのメインカメラ、50メガピクセルの超広角カメラ、32メガピクセルの自撮りカメラはどれも、より低価格な「Google Pixel 7A」の性能には及ばない。とはいえ、この価格で販売されている端末の多くは優れた写真を撮影できる。被写体が写真映えする場合には特にだ。「Nothing Phone(2)」でもたくさん撮影し、その出来栄えには満足している。
ただし、例えば座っていない犬など被写体の動きが多い場合、画像の品質が一定しないことがたまにあった。ポートレートモードはもっと光が必要と感じることが多く、木の枝葉などでは色収差が起きていた。色が歪み、紫色に寄っていたのだ。
100ドル価格が低い「Google Pixel 7A」はより優れたカメラとはるかに高い防水性能を誇り、セキュリティ更新の保証期間も長い。また、米国のすべての主要キャリアで使える。それに「Google Pixel 7A」は便利なソフトウェアの機能をたくさん搭載している。こうした点は高く評価できる。
一方で「Nothing Phone (2)」はバッテリーの持続時間の長さ、さくさくとした動作、そして便利で楽しいライトを搭載している点で優れている。どちらのほうがよいかは、あなたの好みによる。ともあれ、以前に比べて優れた端末の選択肢が増えたことは純粋にうれしい。
◎「WIRED」な点
動作が非常に滑らか。きれいな画面。バッテリーの持続時間は良好。洗練された美しい設計のソフトウェアには便利な機能を多数搭載。Android OSのアップグレードは3回、セキュリティ更新は4年間保証。「Glyph 」のライトはより有用(そして楽しい)が、そこまで実用的ではない。ワイヤレス充電とNFCに対応。
△「TIRED」な点
グーグルの「Google Pixel 7a」のほうが低価格でカメラの性能も優れている。色収差が大きい。Verizonのネットワークには対応していない。防水・防塵性能はIP54とやや低い。
(WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)
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