トランプが共和党候補指名争いの初戦で大勝も、支持者たちが広げる「陰謀論」の中身

米共和党の大統領候補指名争いの初戦となった1月15日（米国時間）のアイオワ州党員集会で、元大統領のドナルド・トランプが圧倒的な得票率で勝利した。それにもかかわらず、熱狂的なトランプ支持者たちの一部は、たったひとつの郡での敗北を理由に、すでに選挙での不正を訴え始めている。

「今夜、トランプ大統領がすべての郡で勝利したと報じられたあとで、民主党が不正を働き、いまはアイオワ州ジョンソン郡でわずか1票差で勝者がニッキー・ヘイリーに入れ変わったと報じられている。ここはバイデン支持者が4割を超えている郡だ」──。トランプが称賛する極右活動家のローラ・ルーマーは、そう16日未明にXに投稿している。

その他のトランプ支持者たちも、極右オンラインプラットフォームで選挙を巡る陰謀論を展開した。アイオワ州の共和党とAP通信による選挙報道の特設サイトが発表した結果によると、トランプはアイオワ州の党員票の51％を獲得し、2位のフロリダ州知事ロン・デサンティスの21％、3位の元国連大使ニッキー・ヘイリーの19％に大差をつけたにもかかわらず、である。

「ジョンソン郡での再集計が必要だ、いますぐに！」と、「Red Eagle Politics」を名乗るXアカウントは投稿していた。

また、トランプ自身が手がけるソーシャルメディア「Truth Social」では、退役した元米陸軍大尉で過去数年の選挙結果の否定運動の中心人物となっているセス・ケシェルが、次のように投稿している。「ヘイリーが1票差でジョンソン郡をとったことで、99郡すべてトランプというわたしの予想は狂った。再集計！」

ケシェルのフォロワーたちの一部は、ヘイリーに投票した人々は「雇われて」トランプ以外に票を入れたと訴えた。しかし、主張を裏づける根拠は一切提示していない。

2021年1月6日に起きた米連邦議会議事堂の襲撃事件で計画に大きく関与した親トランプのオンライン掲示板「The Donald」でも同様だった。この掲示板のユーザーたちは、ヘイリーが15日夜に「アイオワ州の有権者が指名者争いを『2人の候補者によるレース』にした」と表現したことに噛みついたのだ。

「やつらが郡の結果を操作して、たった1票差で勝ったことにしたのは、ただ彼女がこんなふうに強弁できるようにするためだ」と、あるユーザーは投稿している。

「選挙不正」を訴える主張は始まったばかり

1票差でのトランプの敗北は、いわゆる“ディープステイト”［編註：世界を陰から支配してきた勢力とされ、ユダヤ人の国際金融家たちで構成されるとの主張がある］の仕業だとするユーザーもいた。

「1票差の勝利なんて、あまりにあからさまだ」と、あるユーザーは主張する。「まるでディープステイトからの『ファック・ユー』のメッセージだ」。同じスレッドには、トランプに再集計を要求し、ライバルを「挑発」するよう促す投稿も見られた。

さらに一部のトランプ支持者は、数万人の民主党員がこの日の集会のために報酬を受け取って支持政党を鞍替えし、ヘイリーに投票したと主張した。

「アイオワ州の民主党は数万人の党員を唆し、報酬を提示し、一時的に党員登録を民主党から共和党に切り替えさせ、集会でニッキー・ヘイリーに投票させたらしい」。かつて民主党下院議員エリック・スウォルウェルへの殺害予告により有罪判決を受けたジョシュア・ホールは、Xにそう投稿している。

報酬を受け取って投票した人物がいた証拠は一切存在しない。だがCBSの報道によると、ジョンソン郡の少なくとも一部の地区では、集会の夜に選挙対策事務所に用意された党員登録の切り替えの申請用紙が足りなくなったという。

2020年の大統領選でのトランプの敗北以来、次々と沸き起きた「選挙不正」を訴える虚偽の主張がどれもそうだったように、15日夜の集会で不正があったとするこれらの主張は、どれをとってもまったく証拠を伴っていない。長い予備選は始まったばかりであり、選挙の正当性に対するくだらない難癖も、まだまだ序の口だろう。

（WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto）

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